入院漫談③

続 介護入浴の話

 

入院して五日

 

まず、隣のベッドのイケメン君に謝らなくてはいけない。昨夜彼と仲良くなって、色々話した結果、あることを判明した。すなわち、彼が介護入浴されたことなく、看護師さんと一緒に出ていった約一時間が手術タイムだった。局所麻酔だったので、爽やさを保ていた彼が、下ネタさえ忌み嫌う、全く純真潔白な人間で、如何にも捻くれてる自分とは、好対照となった。

 

曰く:距離が長ければ長いほど、誤解する(される)可能性が高くなる。

もしかしたら、友達を全員誤解しているかもしれない。

まあ、モウモンタイ(没問題)

 

今日の話は実話である。

 

手術後一日目は、風呂禁止されていた。しかし、髪が看護師さんに洗ってもらうことが可能。当然ながら、僕担当の優しい男の看護師さんに洗ってもらいました。当時はイケメン君の介護入浴を勘違いしていたので、今自分が男に髪洗ってもらっている己の境遇を思い出すと、嫉妬心がナトリウムに水を掛けた後に起きた反応のように一気に爆発した。

(看護師さん、非常に申し訳ありません。)

当然の如く、「お湯の加減如何ですか」など聞かれても、「ダイジョウブデス」しか返してなかった。

 

ところが、その翌日、僕にも幸運日が訪れる。

 

担当の看護師さんがついに、可愛い女の看護師さんになった。

 

風呂がまだ禁止されていたが、せめて髪を…

 

というのが当時の想いであった。

しかし、今回の手術は肉の洗浄であったため、関節がさほど影響されるわけでもない。頑張れば、本当に頑張れば、もしかしたら、自力で髪洗える。

 

でも頑張りたくなかった。ここは病院だから無理やり強がる必要がない。洗って貰えばいいのよ。

と、悪魔に堂々と説得された。

 

そして、介護入浴の時間になると、念願の可愛い看護師による洗髪が叶った。

(ちなみに、この事を実際介護入浴された事のないイケメン君に語ると、彼にかなり羨まれた。)

余談ながら、僕は髪洗ってもらっている時大変喜んでいて、ついついと色々話したくなった。いろんなコトを聴き集めたが、口が閉じている時間が短く、喋っている時にシャンプーの泡が口に流れ込み、たくさん泡食べさせられた。なんと、シャンプーもなかなか甘いではないか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院漫談②

介護入浴の話

僕の病室は四人部屋である。通路を挟んでベッド二つずつ置かれていて、その間がカーテンによって分けられている。僕の隣には、某有名私立大学三年のサッカー部のイケメンがいる。

入院日は僕より早かったので、僕が入院する時にすでに手術を終え、シャワーなどが自分でできない状態になっていた。

入院当初僕の世話をしていたのが男の看護師だった。心の中で「運が悪りぃな」と叫んでいたが、口には一切出さず、表情にすら表れていなかった。用件を終え、去っていく彼の姿を見て、僕は思わずため息を漏らしていた。

しばらく経つと、隣のカーテンの中から、鈴が鳴るような可愛い声が聞こえてきた。意地悪く盗み聞きをすると、どうやらその可愛い声の主はイケメンの担当看護師だった。

 

間違いなく可愛い女の声だった。

 

話の内容が以下のようである。

看:「◯◯くん、今からシャワー浴びますね〜」

男「はい、宜しくお願いします。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それと同時にカーテンの向こうにいる僕の心情は以下のようである。

僕:

いいな…

声からすれば絶対かわええやん…

何この差別…

これが私大と国公立大の差か…

これが僕とイケメンの差か…

 

四十五分以上に経っても、彼らは戻って来る様子が全然なかった。

いよいよ、心情がエスカレートした。その時に考えていたことが、悪魔に近かった。

僕:

おいおいおい、介護入浴にしても長すぎるべ…

私大はいくら払ってんだよ…

コースが長すぎるべや…

サービス良すぎるべや…

 

捻くれてる僕と対照に、彼らが談笑しながら、シャワールームから帰ってきた。

僕はなぜか一安心して、その日二回目のため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院漫談

入院して、すでに三日が経った。

全身麻酔による副作用で、昨日まではフラフラしていた。一時間以上の読書及び、ネットサーフィンをすると、目が赤くなって、開けれなくなる。

寝ることさえできなかった。

手術後の三時間の苦痛を思い出させるからである。

 

全身麻酔の患者は術後の三時間酸素マスクを吸わなければいけない決まりがある。患者のための措置だが、実に忌々しい決まりである。術中、自力で呼吸できないため、のどに管を通して、そこから酸素を入れ込む。その時は意識がないため、当然、何も思わないが、意識が戻ると急に喉に異物感を感じ、咳でこの異物感を拭き払おうとしてもそれが無駄である。でも咳をしないとこの異物感がますます増大する。その上酸素マスクをつけているので、咳で出た熱気がマスクの中に閉じ込められ、大変蒸れて熱苦しい状態になる。

三時間の苦痛はそれだけではなかった。

強い痛み止めを点滴しているので、意識が曖昧になる。「三時間」という概念さえわからなくなる。時間が短くて長いように感じる。時間を計るために、脳内で歌を再生させるのが自分のやり方である。この曲がおおよそ八分だから、八曲分を頭の中で再生すれば、一時間が経つということになる。ところが一曲を再生しただけなのに、その後、看護師に一時間経ちましたような事言われた。不思議なことである。今度は疲れ果てて、断続的に睡眠に入る。一回寝た後にもう一回目を覚ますと、すぐに時間を聞きたくなる。渾身の力を使い時間を聞いてみるが、どうやら15分ぐらいしか経ってないらしい。これもまた不思議なことである。

 

寝れば、いや、目を閉じるだけでもそれらのことを思い出し、たちまち目を開ける。要するに寝たくないのではなく、寝ることによって、それらのことを思い出すのが怖くて、寝れないのである。