入院漫談②
介護入浴の話
僕の病室は四人部屋である。通路を挟んでベッド二つずつ置かれていて、その間がカーテンによって分けられている。僕の隣には、某有名私立大学三年のサッカー部のイケメンがいる。
入院日は僕より早かったので、僕が入院する時にすでに手術を終え、シャワーなどが自分でできない状態になっていた。
入院当初僕の世話をしていたのが男の看護師だった。心の中で「運が悪りぃな」と叫んでいたが、口には一切出さず、表情にすら表れていなかった。用件を終え、去っていく彼の姿を見て、僕は思わずため息を漏らしていた。
しばらく経つと、隣のカーテンの中から、鈴が鳴るような可愛い声が聞こえてきた。意地悪く盗み聞きをすると、どうやらその可愛い声の主はイケメンの担当看護師だった。
間違いなく可愛い女の声だった。
話の内容が以下のようである。
看:「◯◯くん、今からシャワー浴びますね〜」
男「はい、宜しくお願いします。」
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それと同時にカーテンの向こうにいる僕の心情は以下のようである。
僕:
いいな…
声からすれば絶対かわええやん…
何この差別…
これが私大と国公立大の差か…
これが僕とイケメンの差か…
四十五分以上に経っても、彼らは戻って来る様子が全然なかった。
いよいよ、心情がエスカレートした。その時に考えていたことが、悪魔に近かった。
僕:
おいおいおい、介護入浴にしても長すぎるべ…
私大はいくら払ってんだよ…
コースが長すぎるべや…
サービス良すぎるべや…
捻くれてる僕と対照に、彼らが談笑しながら、シャワールームから帰ってきた。
僕はなぜか一安心して、その日二回目のため息を吐いた。